杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

天才と秀才と凡人

北野唯我『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社、2019年)という本を図書館で見て面白そうだと「衝動借り」した。

この本は「凡人が、天才を殺すことがある理由。」というブログを書籍化したもの。ブログは公開後すぐに30万PVを超えたというからすごい。

物語形式で述べられている変わった本なのだが、この本によると、「天才」がイノベーション=新しい価値を創ろうとするのは、「飽き」との壮大な戦いであるらしい。

たしかに、藝術家が絵を描いたり音楽を作ったりするのは、現実世界に飽きているからだと言えるかも知れない。

「あのな、大人はな、『飽きる』ことに対して、たくさんの対抗策を持っている。遊び、趣味、金、恋愛とかな。でもな、ちゃうんや、天才が求めているのはそんなんちゃう。これまでの世界に飽きているし、そこに『改善できる余白』しか見えない。だから、指摘するし、作るんや。彼らが求めるのは、常に飽きを満たしてくれるような、心が燃えたぎるような『余白』なんや」

上記の「指摘する」は、前段で、天才少年が学校の教師の間違いを指摘する、と書かれていたことに関連している。

私は自分をぜんぜん天才だなどと思っていないが、上記の指摘にはちょっと共感する。知人の中には、トレンドを追いかけて毎日が充実している人がいる。その最たるものがグルメで、これにはご当地伝統のものもあり、必ずしもトレンドではないのだが、上記の「遊び」「趣味」に該当するのではないか。もちろんグルメの他にもトレンドは無数に存在し、たしかに「飽きる」への対抗策になっている。

恥ずかしながら私はトレンドに疎く、もともと全くと言っていいほど興味がなかった。それを反省することも多く、本とか建物とか街とか、興味のある分野についてはトレンドも意識するようにしている。以前は映画に血道を上げて最新作も観ていたが、こちらは今ではぜんぜん。。

本書では、天才、秀才、凡人は物事を評価する「軸」が違うとされている。天才は「創造性」、秀才は「再現性」、凡人は「共感性」の軸で評価するようだ。その考えに従うと、トレンドというのは再現性とか共感性に親しみがある領域なのかな、と思えてくる。