杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

「ドーハの悲劇」と勝目梓と大沢在昌

大沢在昌『売れる作家の全技術』(角川書店、2019年)は、小説家を志す人を対象に行った小説講座をまとめた本で、面白くてためになる。小説を書きたくなってくる。しかし書きたくなるだけでは駄目で、書かなくては何の意味のないことも自覚させてくれる。講…

ダークサイド

映画学校のある先生が学生が書いた脚本を評価し「人間のダークサイドがちゃんと描けている」と言っていた。 ダークサイドとは「暗黒面」、つまり人間で言えば怒りとか憎しみとか醜悪な部分、ということになる。たしかに怒りや憎しみといった汚い部分を描くの…

笑われていこうじゃねェか

『ONE PIECE』の黒ひげのセリフだが、ずいぶん前に登場したが今も覚えている。どんな場面で登場するかは、検索すればすぐ分かるのでここでの紹介は省略しよう。 そうそう。夢や野望を抱いて自分の人生を進む過程では、その生き方が他人から理解されず馬鹿に…

事実を基礎にして話すこと

何らかの問題について検討する時はとにかく事実をベースにしないといけないが、これは一人で物事を考えても複数で話し合っても同じである。 ところがこれがなかなか上手くできない。一人で物事を考えるとどうしても理想や願望が強く出てきてしまうし、複数で…

レファレンスもいろいろ

地元の図書館ではレファレンスも復帰したので、こないださっそく探している資料について聞いてみた。レファレンス窓口担当者は日によって違うのだが、その日に対応してくれた人は資料検索の能力が不足していたようで、こちらが知りたいことは一切分からなか…

おせっかい

あまり他人の考え方や行動に口出ししない個人主義者の私だが、最近は「積極的介入」とでもいうべき態度も時には大切だと思うようになってきた。他人を助けようとする場合、当人が私と関わるのを遠慮してきたとしても、少々強引でもいいのでこっちから関わろ…

「高島平文芸」

板橋区高島平に「高島平文芸」という同人誌があったらしい。板橋区立図書館で誌名で検索してみても書誌がなく、現物を読むことができないのが悔しいが、「同人雑誌評の記録」を見ると、「文學界」の同人雑誌評に計3回作品が取り上げられたことが分かる。 そ…

書く覚悟

なんか駄洒落みたいなタイトルになったが、最近は書き物のライフワーク以外のところで様々な諸事雑務が発生して、書き続けるのが難儀になっている。 この諸事雑務、なかなか安易に退けることができず、ちゃんと向き合わなくてはならないことでもあり、つい書…

おくのほそ道主義

ある人が、皆、毎日の仕事を何気なく流れでやっているかも知れないが、実は奥が深いものなんだぞ、などと述べていた。それを聞いて私は、ああ出たな「おくのほそ道主義」と思った。 物事は何でも、突き詰めればいくらでも深く掘り下げることができる。仕事も…

設計図

『星山博之のアニメシナリオ教室』(雷鳥社、2007年)を拾い読みしているのだが、これは隠れた?名著かも知れないと思っている。 「1日目」の第3項「シナリオライターは何をするのか?」は、「一言で言えば映像の設計図をつくることである」とある。そして、…

なんでも屋サラリーマン

真山仁の『ハゲタカ』(講談社文庫、2006年)の、日本のサラリーマンを批判的に書いている箇所を読んで、考えさせられた。 欧米では、職業を尋ねられて会社員だの、サラリーマンだのと答える人は誰もいない。彼らはそれぞれ自らの「仕事」を明確に答える。バ…

ものさし

ようつべで何気なくビジネス動画を見ていたら、ある社長が、何事も最後は自分の中のものさしで測れ、というようなことを言っていた。 これはまったく同感で、他人の意見に参考程度に耳を貸すのは良いが、最後は自分の腹に落ちる判断をしなくてはならない。と…

永遠に続く道

私は精神論とか根性主義というのが苦手で、というのは、それを信奉すると自分の義務が無限になってしまうからである。 例えば仕事の中で、業務は言われたことだけやればいいんじゃない、とある人から言われたことがある。しかし、では具体的に何をやればいい…

要素還元主義

こないだある本で「要素還元主義」という言葉を見つけた。これは複雑な物事を細かい要素に分解し、その一部のみを理解すれば複雑な物事全体を理解できるはず、と考えることであるらしく、自然科学において生命などを考える方法のようだ(よく分からん)。 さ…

『市民ケーン』とロバート・ワイズ

シド・フィールド『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』(フィルムアート社、2009年)の最初の方にオーソン・ウェルズの『市民ケーン』について触れているところがある。 この映画を編集したのは、巨匠ロバート・ワイズ(『ウエスト・サイド物…

眠るのが下手

勉強とか創作のために眠る時間を削るのを学生時代から当たり前にやっている。その一日、ライフワークを少しでも進展させなくては気が済まない質で、会社の仕事にプラスで勉強や創作をしないと心が落ち着かないから、どうしても夜遅くまで机に向かってしまう…

調べ物はアクション

地元のある町の自治会の周年記念誌を図書館で見つけたので読んでみたら、地元にかつて芥川賞候補になった作家が住んでいたことが分かって驚いた。 と同時に、その作家が地元の文藝誌に参加していたことを知って、地元に同人誌めいた集まりがあったんだという…

カード

シド・フィールド『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』(安藤紘平、加藤正人、小林美也子、山本俊亮訳、フィルムアート社、2009年)をぱらぱら読んでいて、シナリオの構成をカードで考える手法について書かれている箇所があった。 そういえば…

馬鹿雑感

世間では「馬鹿」という言葉が肯定と否定の二つの使われ方をしている。多いのはやはり否定の方で、これは「間抜け」みたいな意味で使われる。一方の肯定的な使われ方は、あれこれ頭で考えず熱心に取り組む、いわば「愚直」の意味で使われていて、ある人が言…

ジワジワ…

コロナ禍の苦痛はジワジワ来る。私の場合、収入面の打撃とかよりも、読書時間が減ってしまったこととか、外出が減ったことの躰への影響とか、そういうのが時間が経つにつれてジワジワとやってきている。人と話すのもリモートですることが多くなり、パソコン…

「テキシコー」

Eテレ「テキシコー」は小学校3から6年、中高生までも対象にした、映像やアニメでプログラミング的思考(テキシコー)の面白さを伝える番組である。番組では、「テキシコー」を以下の五つの思考に分解し、整理している。 1 小さく分けて考える2 手順の組み合…

神は細部で罰したまう

ちゃんとした仕事というのは細部がしっかりしている。 最近、仕事でちょっとしたミスをしてしまったことがきっかけで、そのことを思い出した。宮原昭夫『書く人はここで躓く!』増補新版(河出書房新社、2016年)の「神は細部で罰したまう」ではないが、細部…

古井由吉と「木を接ぐ」

「新潮」5月号は古井由吉の遺稿と作家による追悼文が載っている。このほど、図書館の貸し出しが再開したのでようやく借りて読むことができた。 追悼文を寄せたのは蓮見重彦、島田雅彦、佐伯一麦、平野啓一郎、又吉直樹。佐伯一麦の寄稿は「枯木の花の林」と…

郷土史の宝庫

板橋区教育委員会の『写真は語る』(1988年)、『写真は語る 総集編』(1994年)を読んだ。これは「広報いたばし」にかつて連載された記事を集成したもので、板橋区の在りし日の姿を映した写真に関する様々な逸話を複数の書き手が記したものだが、まさに郷土…

熱誠のある人

近ごろ、ある種類の人間をとんと見かけなくなった。「熱誠」のある人である。 かつて私の周囲には元組合の闘士とか、とにかく原発はいけない!と強硬に主張する人とかがいた。若い頃には学生運動をしていた人なのだが、そういう人らの特徴は、とにかく自分の…

図書館ようやく復活

地元の図書館でようやく6月2日から資料の予約とカウンター受け取りができるようになった。長く休館して全サービス停止していたので、うれしい。調べ物を日課としている身としてはやはり図書館という存在は必要不可欠であり、水を得た魚のような気分になって…

板橋区立郷土資料館「心を装う」

板橋区立郷土資料館の休館が終わり、常設展も企画展も見られるようになった。うれしいね。さっそく足を運び、収蔵品展「心を装う」を見てきた。これは、往時の人々が衣服の刺繍や飾りなどにどのような心を込めたかに思いを馳せるもので、「美を装う」「礼節…

日常に埋没しない

朝日新聞日曜日の求人ページの連載「仕事力」。五月は立教大教授の中原淳先生で、テーマは「生涯学ぶと腹をくくろう」である。仕事と学びについての中原先生の考えが四週にわたって語られた。一読して、中原先生の専門領域の中ではごく初歩的なところを語っ…

コナンはラピュタか

NHKで「未来少年コナン」を放送しているので見ている。以前ある人から面白いぞと言われ、機会があれば見たいと思いながらぜんぜん見られなかったので、今回デジタルリマスター版で放送してくれるのはありがたい。 アレグザンダー・ケイの小説が原作で、これ…

メンズクライシス

こないだNHKで「メンズクライシス」というテーマの番組があったので見た。30から40歳代の男の中に、仕事と子育てを両立したいけどできない、仕事量が減らない、といった悩みを抱える人が増えており、そういう状況を指して「メンズクライシス」と言っているよ…