杉本純のブログ

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ダークサイド

映画学校のある先生が学生が書いた脚本を評価し「人間のダークサイドがちゃんと描けている」と言っていた。

ダークサイドとは「暗黒面」、つまり人間で言えば怒りとか憎しみとか醜悪な部分、ということになる。たしかに怒りや憎しみといった汚い部分を描くのは人間を描く上で大事だと思うが、どうも先生の言い方を見て、そういう側面を盛り込み「さえすれば」脚本として立派である、と言っているように見えてしまった。

果たしてダークサイドを入れればその脚本は立派なのか。それこそ「スター・ウォーズ」じゃないが、単に悪役・敵役を表す記号のように使われれば、底の浅い娯楽作になってしまう可能性はないだろうか。まぁ、立派かどうかは人の評価に過ぎないのだが…。

ダークサイドを描いていない名作は映画でも小説もたくさんあるように思う。分かりやすいところで言えば、「トトロ」は私はさして名作とは思わないが、あの映画にはダークサイドなんて描かれていない(ちょっと泣いたり叫んだりがあるが)。むしろ人間の可笑しさとか情けなさとか、そういうリアルな部分が伝わってくるのが良い作品のように思う。