杉本純のブログ

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熱誠のある人

近ごろ、ある種類の人間をとんと見かけなくなった。「熱誠」のある人である。

かつて私の周囲には元組合の闘士とか、とにかく原発はいけない!と強硬に主張する人とかがいた。若い頃には学生運動をしていた人なのだが、そういう人らの特徴は、とにかく自分の思想の正しさに絶対の自信を持っていて、かつての私のような自分に自信のない人間をあっという間に心酔させる力があったように思う。私自身も心酔させられた人間の一人だったわけだが、やがて私はそういう人たちの考えに納得できないものを感じるようになり、また恐ろしく知見が偏っていることも知って、心の酔いは醒め、幻滅し、袂を分かつことになった。

以来私は、自信満々の人とか、左にせよ右にせよ偏った思想を持つ人をひどく警戒するようになったように思う。そして今では周囲に強硬な思想を持つ人はきれいさっぱりいなくなった。いや…まだわずかながらいるようにも思うが、少なくともかつて私の周りにいた左側の人でないことは確かである。

そういう人たちにおおむね共通して見られる特徴が「熱誠」だ。とにかく馬鹿がつくくらい(いや、実際に馬鹿なのだが)真面目で、ひたむきで強烈な真心を持っている。最近テレビでそういう傾向のある人を見たが、その人にもやっぱり熱誠があった。私が心酔させられたのは、つまりあの熱にやられたってことなんだろうと思う。