杉本純のブログ

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なんでも屋サラリーマン

真山仁の『ハゲタカ』(講談社文庫、2006年)の、日本のサラリーマンを批判的に書いている箇所を読んで、考えさせられた。

欧米では、職業を尋ねられて会社員だの、サラリーマンだのと答える人は誰もいない。彼らはそれぞれ自らの「仕事」を明確に答える。バンカー、証券マン、あるいは工場労働者でありウエイトレスだ。しかし、日本人はなぜかみな「サラリーマン」と胸を張って答える。これが、嘗てこの国を経済大国に押し上げた原動力であり、またバブル経済が崩壊しても右往左往するばかりで傷を大きくしてしまった原因でもあった。

この三人称体の文章の前には外国人の登場人物が日本の「サラリーマン」を小馬鹿にするようなことを言っていて、上記引用も、どちらかというと批判的だろう。

日本の就職活動は就職ではなく「就社」だというし、企業の採用の仕方はジョブ型でなくメンバーシップ型だともいう。そういえばこないだ話を聞いた、ある会社のあるベテラン社員は、若い頃の自分は会社のさまざまな種類の業務をやって「なんでも屋だった」と誇りかに言っていた。私はそういうのがたまらなく空しく聞こえるが、『ハゲタカ』にある通り、それが会社の成長の推進力になったのは恐らく事実なんだろう。