杉本純のブログ

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職務の束

朝日新聞12月7日朝刊25面「働く」に、労働政策研究・研修機構研究所長の濱口桂一郎氏のインタビュー記事が載っていた。濱口氏は人事制度のスタイルで昨今よく言われる「ジョブ型」の名付け親であり、このインタビューでは、その言葉が「成果主義」の代替用語として使われている現状に反駁しつつ、今後起きるかも知れない雇用の問題を指摘している。

私は会社で働きながらライターという職務に従事し、その過程で仕事について雇用とか働き方について考えることが多いので、この記事は興味深かった。

その冒頭に、会社と働く人をつなげる方法が二種類あるとして、ジョブ型とメンバーシップ型を説明している。ジョブ型は、会社を「ジョブ(職務)の束」と考え、ジョブごとにそれができる人を当てはめるやり方。一方のメンバーシップ型は、会社を「人の集まり」と見なし、まず人を雇っていろんな仕事をさせるやり方である。ジョブ型ではジョブ・ディスクリプションが定められ、必要なスキルが明確であるのに対し、メンバーシップ型は新卒一括採用してビシバシ鍛える、日本企業に典型的なやり方とある。ジョブ型は本当の意味での「就職」で、メンバーシップ型は「就社」のイメージになる。

「職務の束」という言葉は分かりやすい。ライターという職務は、取材の段取りや実施、原稿執筆やその後の修正対応といったタスクが束を成しているのだろう。その他にデザイナーの職務、営業の職務、管理の職務といった束が集まり、会社を形成しているわけだ。もっとも、ライターとインタビュアーは違う人が担うこともあるし、修正対応はデザイナーが行う場合もあるので、会社ごとにライターのジョブの定義は様々だろう。