杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

しったり坂

板橋区の赤塚諏訪神社の裏手の道を西側に少し行くと、「しったり坂」という坂道があります。 都立赤塚公園大門地区の方へ下りていく道で、板橋区教育委員会『文化財シリーズ第76集“まち博”ガイドブック 下赤塚・成増・徳丸・高島平地区編』(1994年)の地図…

仕事の究極の目的

たしか本田宗一郎の『俺の考え』(新潮文庫、1996年)という本に、会社の課の目的は、その課をなくすことだ、という本田の逆説的な考えが載っていた。経理でも製造でもどんな課でも、究極はその課がなくても良くなるような状態を作ることが最終目標である、…

文藝に触れたい

このところだいぶ忙しく、電車に乗る機会も減ってしまったので本を読む時間がなくなってしまい、困っている。 今いちばん欲しいのは何かと言えば、文藝に接する時間である。前もこのブログで書いたが、私にとって読書が精神に与える影響はかなり大きく、だか…

撤退の難しさ

佐藤雅彦・竹中平蔵『経済ってそういうことだったのか会議』(日本経済新聞出版社、2002年)を読んでいて、会社のエグジットストラテジー(出口戦略)について述べられている箇所が示唆に富んでいると思った。 竹中 戦争のとき、「進むよりも撤退するときの…

十羅刹女神堂

板橋区の都立赤塚公園は、高島平に大きな公園がありますが、首都高速池袋5号線をくぐった先の徳丸、四葉、大門にも緑地が広がっています。大門の方へ進むと新大宮バイパスと首都高が重なる場所に至り、バイパスを跨ぐ歩道橋を渡ると赤塚溜池公園へ、左へ折れ…

800記事突破

このブログの記事数が800を超えた。2018年3月11日から書き始め、1日1記事を自らに課して書き続けてきて、それが800日継続できている。厳密に言うと毎日アップはできていないのだが、午前0時を過ぎてアップするなどの不手際があったためで、だから翌日などに2…

仕事観の宗教化

どんな意志や夢を持って仕事に当たってもそれは当人の勝手なので構わないが、どうも見ていると、他人に一定の価値ある成果物を提供していくばくかのお金をもらうはずの「仕事」を、もっぱら自己実現の方途にしてしている人がいるようだ。もちろん、仕事を通…

創作雑記22 手放す勇気

大沢在昌『売れる作家の全技術』(角川文庫、2019年)をパラパラ読んでいたら「作家になるための大切な四つのポイント」というのがあり、特に四つ目の「手放す勇気を持つ」は重要だと思った。 アイデアが出てこない、書きかけの小説をどう進めていいかわから…

次の作品へ

このほど、小説を一篇、完成させた。小説を書き上げたのは何年ぶりになるだろうかと思うほど久しぶりのことで、こんなんではこの先、死ぬまでに自分はあと何作品書き残すことができるのか、恐ろしくなってきたものだが、とはいえちゃんと完成させたことをひ…

発見する生活を

コロナ禍の影響で電車に乗らず、出掛けることもないので、外出することがあるとすれば近所を散歩することくらいである。無目的にただぶらぶら歩いているだけなので、こういう時こそ、発見のある散歩をしたいものだ、と思っている。 都心に出掛ける必要なんて…

書く生活

会社勤めをしながら自分が書きたいものを書いている、という人は少なくない。しかし、物を書く生活を満足に送るのは簡単なことではないと思う。年齢が重なれば重なるほど、会社勤めの中で背負うべき役割は大きくなり、結婚して子供でもいようものなら、私生…

叙述と描写についての雑感

先日、人前で話す機会があったのだが、予定していた内容を予定時間内に終わらせることができず恥ずかしい思いをした。。 で、振り返って考えたのだが、小説執筆で意識していたストーリーとテーマ、叙述と描写って、スピーチとか司会進行でも同じように言える…

「加特力僧」と「大地主」

バルザック『農民』(水野亮訳、岩波文庫、1950年)下巻の解説の冒頭。 一八三四年バルザックはジュネーヴでハンスカ夫人から次のやうな申出を受けた。すなはち彼女と彼女の夫のハンスキ氏のために、それぞれ一つづつ小説を書いて頂きたい。自分には「加特力…

久しぶりの電車

先日、都心に出掛ける用事があり、久しぶりに電車に乗った。車内は、もっとガラガラなのかと思ったらわりあい込んでいて、とはいえコロナ前の半分ほどだった。極力何にも触らず移動。 都心の繁華街で電車を降りて周辺を歩いたのだが、ここも予想以上に人が行…

生涯学ぶ

朝日新聞日曜日の求人欄で連載されている「仕事力」は、5月10日から立教大教授の中原淳先生だ。 10日は全4回の初回で、先生が「人間の学び」を研究する動機が、その生い立ちと共に紹介されている。人間はもともと創造的な面を持っているはずだが、それが大人…

作中の飲酒の効果

自分がこれまでに書いた小説をいくつか読み返してみて、作中人物が何かあると他人と酒を飲んでいることに気づき、ちょっと衝撃を受けている。 かつて映画学校で他の学生から、先生が脚本の授業で「本音を言わせたい時は酒を飲ませろ」と言った、と聞いたこと…

出所不明本

長い読書生活の中で、色んな本に出会ってきた。我が書架には、本屋で買った新刊書もあれば古書店で買った絶版本はもちろん、珍書奇書の類いもある(珍書奇書だから所有しているわけではない)。人から貰った本も少なくなく、借りている本もある。不揃いの全…

選択と集中

知的好奇心は旺盛な方だと自覚している。そのお陰で読書生活も映像生活(映画とかドキュメンタリーとか)も充実していて、その意味では毎日学びと発見があって楽しいのだが、あれこれ色んなことに興味が湧いて手を伸ばすのは良いものの、挙げ句の果てにとっ…

リトル・リチャードの思い出

5月9日、リトル・リチャードが亡くなった。享年87歳である。 私は特にロックが好きなわけではないが、リトル・リチャードは学生時代からよく聴いていた。といっても、聴きこんでいたわけでは全然なく、いくつかの有名な曲を歌詞の意味も知らずに流していたに…

BBC版「レ・ミゼラブル」とワーテルローの挿話

「レ・ミゼラブル」が3月15日から5月3日までNHKで放送された。この作品は、元は英BBCで2018年に制作されたもの。主演はドミニク・ウェストで、ジャヴェールをデヴィッド・オイェロウォが演じている。 私は「レ・ミゼラブル」をすばらしい小説だと思っている…

インタビュイーの死

長年ライターをやっていると、インタビューをした相手が死ぬ、という事態に遭遇することがある。これは私も経験があり、十年を超えるライター歴の中で、インタビューをした方が亡くなったことは、すでに一度や二度ではない。 私の場合、死んだインタビュイー…

眼と脳

築山節『脳が冴える15の習慣』(生活人新書、2006年)には、パソコンのモニターやテレビの画面を見続ける習慣が長年にわたり続くと思考の働きが鈍くなるのではないか、といった見解が書いてあり、IT社会を生きる上で気をつけておきたい問題として示唆してい…

机の上から

川端康成がノーベル文学賞を受賞した時、三島由紀夫と伊藤整が川端を囲んで談話した。二十分ほどの談話だったと記憶するが、その中で三島が、川端が夜な夜な机に向かい、原稿を書く、そういう営為を経て生み出された作品がノーベル賞という国際的な栄誉につ…

マジック7

人間の脳には「マジック7」と呼ばれる性質があるらしい。同時に脳の中で保持したり系列化したりできる要素は、多い人で七つ、少ない人で三つで、5±2が標準的と言われているそうだ。築山節『脳が冴える15の習慣』(生活人新書、2006年)に書いてあった。 パソ…

読書と精神

コロナ禍で外出が減り、電車に乗る機会もなくなった。カフェなどコーヒーが飲める店の中には開店しているところもあるが、どうも心理的に入店するのに抵抗がある。店にはけっこう人がいて、座席で向き合って話している夫婦なども普通にいるが、この人たちは…

書くべきものがない、ということ

今年3月3日に心筋梗塞で87歳で死去した勝目梓『小説家』(講談社文庫、2009年)の一部分を読んで、これは全篇をちゃんと読まねばならん小説だという思いがしている。 これは自伝小説だが、小説では「彼」として出てくる勝目は、同人誌「文藝首都」に身を置き…

佐伯一麦とアラン・シリトー

「COSMOPOLITAN」1991年10月号に、「佐伯一麦さんがすすめる 男の純情、男の気持ちがわかる8冊」という記事がある。1991年は佐伯が『ア・ルース・ボーイ』を発表し、三島由紀夫賞を取った年であり、注目されていたのだろうと思われる。この記事を書いたライ…

個人商店

山崎元『お金とつきあう7つの原則』(KKベストセラーズ、2010年)の第2章「お金の稼ぎ方・使い方」には、自分が他では代わりが利かない貴重な人材になるための発想法として、自分を「個人商店」と位置づけると見通しが良くなる、と書いてある。 本書はそこか…

論より証拠

昨日はサラリーマンと議論について感じていることを書いたが、つまりサラリーマンの世界というのは常に人が動き、金が動くのだから、何が正しいかを議論している暇などない世界、ということが言えると思う。つまり、サラリーマンの世界は一種の戦場であり、…

議論好きサラリーマン

司馬遼太郎『ビジネスエリートの新論語』(文春新書、2016年)の「議論好きは悪徳」は、「人生はいつまでも学校の討論会ではない。」というカーネギーの言葉を引き、タイトルの通りサラリーマン稼業にとって議論好きであることは悪徳だと述べている。 まだし…