杉本純のブログ

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個人商店

山崎元『お金とつきあう7つの原則』(KKベストセラーズ、2010年)の第2章「お金の稼ぎ方・使い方」には、自分が他では代わりが利かない貴重な人材になるための発想法として、自分を「個人商店」と位置づけると見通しが良くなる、と書いてある。

本書はそこから、キャリアデザインを前提にした、人材市場における自分の立ち位置と歩みを考える一種のマーケティングの話になる。近年は起業する人が増えていると聞くし、フリーだとかパラレルだとか、転職も当たり前、会社も終身雇用を維持できなくなっているとも聞くから、自分を「個人商店」と考えるのは重要だし、ごく当たり前のことだとも思う。

私自身、会社勤めの立場にあるが、勤め人をしている知人を見ていると、そのいくたりかは「個人商店」的な発想などなく、ただ会社で働いているだけで勉強もせず、会社の中でその人生が完結しているように思えてくる。知人にはクリエイターと呼ばれる人もいるが、その中にも、宮仕えの発想から一歩も出ようとしない人が少なくない。

そういう人は、評価も昇給も栄達も、一切が会社の経営者に委ねられるようなもので、文字通り会社の中にその人生の可能性のほぼ全てが収まっていると言えると思う。そんな人生の何が面白いのかと思うが、むろん、本人が悔いがないならそれほどけっこうなことはなく、人間であれば全員「個人商店」的発想をしなくてはならないわけではない。それに、会社勤めをしていても「個人商店」的発想で自分を磨いて価値を高め、思うように人生を切り拓いていく強者はいるだろう。

つまり、自分の人生を自力で切り拓く意志があるかどうか、ということだと思う。