杉本純のブログ

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作中の飲酒の効果

自分がこれまでに書いた小説をいくつか読み返してみて、作中人物が何かあると他人と酒を飲んでいることに気づき、ちょっと衝撃を受けている。

かつて映画学校で他の学生から、先生が脚本の授業で「本音を言わせたい時は酒を飲ませろ」と言った、と聞いたことがある。

酒というのは、たしかに本音を語らせるには都合の良い道具のような気がする。しかし事あるごとに酒酒酒では藝がない気もする。安直に過ぎるように思う。

酒を飲むと本音が出るのは、酒が理性を破壊するからだ。しかし、酒を飲ませて本音を言わせるというのは、脚本でも小説でも、そのまま使えば人物の気持ちの単なる「説明」でしかないだろう。

人間の本音や感情は、言葉でなく行動の方に表れるものだ。酒では、単に気を許している相手に「思い」を語っているに過ぎない。だから、「本音を言わせたい時は酒を飲ませろ」は、ひとまず正しいが、ストーリーを展開する上でさほど有効とは思えない。「本音を伝えたい時はアクションを起こさせろ」の方がもっと正しいと思う。