杉本純のブログ

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創作雑記22 手放す勇気

大沢在昌『売れる作家の全技術』(角川文庫、2019年)をパラパラ読んでいたら「作家になるための大切な四つのポイント」というのがあり、特に四つ目の「手放す勇気を持つ」は重要だと思った。

イデアが出てこない、書きかけの小説をどう進めていいかわからない、突破口が見つからない、そういうときは、思い切って離れる勇気を持ってください。

私は今まで八六冊の本を出してきました。どれも傑作にするつもりで書き始めるのですが、結果的にはうまくいかなったもの、自分でも辛いなと思っている本が何冊かあります。なぜそんな本を出したのかというと、次に行くためなんです。次の作品に行くために、とりあえず目の前の作品を仕上げて本にする。

最近、一篇の小説を数年かけて完成させたものの、それでもまだこの作は完全じゃないんじゃないかと思うことがしばしばある。というより、そういう気持ちでずるずると直し続ける日々を送り、完成が遅くなったわけだった。

もう、それではいかんと強く思うのである。私は出版社から本を出したことがないので、上に引用した中では「うまくいかなかった本を、それでも出した」という部分はまったく分からない。しかし、完全を期して悩む時間を過ごすよりは、とっとと次の作品に移る方が賢明だし建設的でもあると最近は思っている。書きかけのまま上手く進まない作品は、しかし頑張れば傑作になるかも知れない。だからできる限りやってみることも大切だが、思い切って手放し次に進むのも勇気ある決断だろう。