杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

お金のはなし16 「より良きところに住め」

「黄金を増やすための七つの道具」

ジョージ・S・クレイソン原作の漫画『バビロン大富豪の教え』(漫画:坂野旭、翻訳協力:斎藤慎子、文響社、2019年)を読んでいます。

両学長のようつべチャンネルをたまに見ていますが、その中で本書のことを知り、面白そうなので読んでみることにしました。本書は、1926年にアメリカで出版された『The Richiest Man In Babylon(バビロンの大金持ち)』を漫画化したもの。原作は刊行後百年近く経っているにも関わらず、今も多くの人に読まれているらしい。お金を得るテクニックではなく、「お金に愛される知恵」「働くことの大切さ」など、幸福になるための真理が書かれているとのことで、教養として読んでおきたいと思いました。

さて本書の第一、二章は、古代のバビロニア王国の首都バビロンで、貧しい武器職人の息子バンシルがバビロン一の大金持ちであるアルカドに会い、「黄金を増やすための七つの道具」、平たく言えばお金持ちになるための知恵を教わる様子が描かれます。その七つとは、

1 収入の十分の一を貯金せよ
2 欲望に優先順位をつけよ
3 貯えた金に働かせよ
4 危険や天敵から金を堅守せよ
5 より良きところに住め
6 今日から未来の生活に備えよ
7 自分こそを最大の資本にせよ

です。

環境の力

この七つは、ようつべの動画を通して以前にも見たことがありました。今回改めて漫画で読んで、「より良きところに住め」という五つめの道具について考えました。アルカドは次のように説きます。

ただ安くて広い借家に住めばいいと思っている者がなんと多いことか!!
家というのはただ住むだけのものではない
「庭で遊ぶ子供達」「妻が育てたイチジクやブドウ」「仕事場までの距離」
住居は幸せな生活と密接に関わっており、そしてその幸せは貯金を増やすモチベーションとなる
住居への支払いは心を豊かにする投資と言えるのである

私はこれまで、この五つめは「民度の良好な地域に引っ越す」と認識していましたが、本書によるとそれは少し違うようです。「住居のグレードを上げる」というより、「生活環境をより快適なものにする」と捉えるのが正しいでしょう。

生活環境が大事であることは分かっていますが、あまりに当たり前のこと過ぎると感じるためか、快適にする努力を続けることは簡単ではない気がします。けれども、環境というのはそこにいる人の精神状態はおろか、価値観すら左右しかねないほど強い力を持っている、というのは最近強く感じるところです。蔵書を無暗に増やすのを止め、もっと創造的な生活を送れるよう整理に着手したのは、そうした考えもあってのことでした。お金持ち云々は別としても、自分が身を置く環境というのは、慎重に考慮する必要があると思います。