杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

感情の安全地帯

低いハードルを確実に越える

築山節『脳から変えるダメな自分』(NHK出版、2009年)を読んでいます。この著者による、生活習慣と脳に関する本を過去に数冊読んで面白かったので、本書も手に取りました。

タイトルの「ダメな自分」は「自分の中のダメな部分」という程度の意味であると、本書の「はじめに」に書いてあります。集中力がない、やる気が起きない、ネガティブ思考に陥る、同じ失敗を繰り返す、などを正しい脳の使い方を習慣化させることで克服することを教える内容です。

本書はどの章から読んでもいいことになっています。私は、自身が見に覚えのある11個目の章「ネガティブ思考に陥りやすい」から読み始めてみました。

築山先生によると、スランプなどのネガティブな状態の原因は、食事や睡眠といったごく基本的な生活習慣が乱れていることにある、とのことです。しかし多くの人が、脳や体の不調をメンタルの問題と混同してしまっているのだそうです。プロ野球の落合が同じことを言っていることや、長嶋茂雄もスランプに陥っている選手に「とにかくバットを振りなさい」と指導していることを引き合いに出しています。

「とにかくバットを振る」のように、当人が「確実にできること」をしている時間を、先生は「感情の安全地帯」と言っています。

「基本に帰れ」の類いの指導はよく聞く気がしますが、「感情の安全地帯」で過ごすことも、似たような意味を持つのでしょう。低いハードルを越え続けることで、「自分はできない」と思ってしまうネガティブ思考を食い止めることができるのだと思います。