杉本純のブログ

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和田敦彦編『職業作家の生活と出版環境』

方法論の本?

和田敦彦編『職業作家の生活と出版環境』(文学通信、2022年)を読んでいます。

榛葉英治(しんば・えいじ)という、私はぜんぜん知らなかった戦後に活躍した直木賞作家に関する資料を扱い、「文学研究の方法や資料について新たな地平を拓いていくこと」を狙いとした本のようです。まだ全部読んでいませんが、方法ではなく「方法論」を展開する本かな、と思いました。

扱う主たる資料は日記のようで、それなら伝記研究になるか、あるいは伝記的情報を元に文学の状況を推論していく、ということになりはしないか。それは「新たな地平」ではない気がしますが、まあ、とりあえず読んでみなくてはと思っています。

そういえば以前、朝日新聞に、小栗虫太郎が地方紙で連載していた長篇小説「亜細亜の旗」についての記事がありました。その作品を発見した二松学舎大教授の山口直孝は、過去に地方紙で横溝正史の『雪割草』を発見し、「地方紙が盲点になっている」と思って調査を続けていたらしい。

日記は、地方紙に比べれば作家に関する資料として重要度が高いでしょうから、すでに調べ尽くされていると思いますが…。また日記自体に関する研究もすでに出ているので、本書がどうやって「新たな地平」を拓くのか、楽しみではあります。