杉本純のブログ

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「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」と地球空洞説

『野火』への影響など

Eテレ「100分de名著」、3月7日からはエドガー・アラン・ポー(私はポオと書きます)のスペシャルで、第一回はポオ唯一の長篇である「アーサー・ゴードン・ピムの冒険」(私は「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」と覚えています)が取り上げられました。
指南役に立ったのは慶應義塾大学名誉教授でポオ作品の訳書もある巽孝之。ポオが編集者であり、「ピム」の人肉食のエピソードが大岡昇平『野火』に影響を与えたことなど、知ってはいましたが改めて作品の魅力とともに解説されていて、かえって新鮮に感じました。

地球空洞説との関係

また私は「ピム」を大西尹明訳で読みましたが、地球空洞説との関連については作品からは窺えませんでした。しかし巽の解説によって、ああそういうことだったのかと分かりました。すなわち、南極まで行ったピム一行が、帰ってくることなど到底できないはずなのにどうしてその後アメリカに戻ることができたのか、それは、南極の地下がまっすぐ空洞になっていて、アメリカに近い北極に通じていたから、ということで、それは作品には直接書かれていないが、当時の読者は空想科学の知識があってそのように想像することができたのだと。なるほどそれなら作品に地球空洞を思わせる描写がなくとも、地球空洞説を採り入れた小説と読めたかも知れません。

ポオは1809年生まれで1849年没です。バルザックより遅く生まれて早く死んだんだなぁ、と改めて思いました。