杉本純のブログ

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佐藤愛子の「断筆宣言」

朝日新聞9月10日(金)朝刊の27面に、佐藤愛子がエッセイで「断筆宣言」をしたことに関する小さな記事が出ていた。

そのエッセイとは、『九十歳。何がめでたい』の続編で、今年8月に出た『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』。その最後で「断筆宣言」をしたというのだが、同書は未読である。「読み返すとどうにも我慢出来ないお粗末さ」を感じ、原稿用紙を捨てる日が続いたことが断筆の理由らしい。

朝日の記事には、同書執筆後4か月経った時、中村真理子という朝日記者が電話をした時のことが書かれている。佐藤愛子は生活する中でエッセイのネタを見つけることはあるが書いてはおらず、「書くのをやめたのが残念に思うことがあります。だけど昔のように言葉が出てこないのでね」と話したそうだ。

98歳にもなると、文章が頭に浮かんでこないということだろうか。私は佐藤愛子の年齢の半分にも達していないが、書き手としてそれほど辛いことはないだろうと思う。

佐藤愛子が最後に書いた長篇小説は『晩鐘』で、2014年とある。「小説はエネルギーが必要」とのことで、まだこんなことは考えたくないが、書きたい題材は書けるうちに書いておかなくてはいけないと思った。