先日も書いた忌野清志郎『ロックで独立する方法』(新潮文庫、2019年)は、すらすら読めて得るものも多い本なので、とてもいい。
これは言わば、「ミュージシャンワナビ」からミュージシャンとしてデビューを果たした人まで、広く音楽をやって生きていこうとしている人へ向けたメッセージ集であり、その中心にあるのは、昨日も書いたとおり、ミュージシャンとして生きていく「覚悟」が大切だということだ。
「独立」って一言で簡単に言うけど、いったい何をもって「本当に独立した」ってことになるのかは、けっこうややこしいんだ。形式的に独立さえすれば、あらゆる問題から解放されてスッキリと自分のやりたいようにやれる、なんていう単純なことじゃない。もちろんこんなことは言うまでもない当たり前のことなんだが、独立したら独立したなりの新たな問題がいくらでも生まれてくるわけだ。「こんなことなら独立なんかしなきゃよかった」と思っちゃうくらいの面倒くさい問題がいろいろ。
私自身、勤め人として生きるのが嫌で、何度も「独立」という言葉が頭をよぎった。しかしそのたびに、いや待て今の俺は絶対にただ独立にこだわってるだけだ、独立なんてしたらしたで仕事がないとか、間違って安請け合いしたら少ないギャラでこき使われるに決まってるとか、そういう悲惨なことはいくらでもあるんだから、一時の感情で独立なんてしない方がいい!と思い直したものだった。
そして考えに考えて、独立のための独立は会社からの逃走に過ぎない、と確信した。それは自由でも何でもないし、下手を打てば会社員時代よりも悲惨な状況に陥る可能性がある。
そしてもう一つ、確信したことがある。それは、独立の精神はたとえ勤め人という立場であっても持つことができ、それを持ち続け、前進し続ければ、道が開けるかも知れないということだ。これは実際、かなり困難な選択だと思うが、焦って独立して取り返しがつかなくなることに比べればはるかに楽だろうと思っている。