杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

研究と思索

バルザック『あら皮』(小倉孝誠訳、藤原書店、2000年)が面白い。

作品の前半、主人公のラファエルが骨董屋で「あら皮」を貰う場面で、店の主人である老人と会話をする。ラファエルは熱心に勉強をしたが報われなかった過去があるが、こんなことを言う。

「ぼくは人生の問題を研究と思索によって解決してきた。けれど、研究と思索は生活の糧をもたらしてはくれなかった」

ラファエルは王侯貴族がするような乱痴気騒ぎをしたいと思っているのだが、それをやるような金はなかった。勉強はしたけれど金持ちにはなれなかった、ということだろう。ということは、「研究と思索」は人生の問題を解決できなかったことになる。

これは小説とはぜんぜん関係ないことだが、ラファエルは努力はしたが行動をしなかったのだろう。努力とは勉強のことで、ここでいう「研究と思索」である。恐らく、それらを通して人生の様々な問題を乗り越えられるくらい博識にはなれた。けれど行動はしなかった、つまりそれを活かして他人の役に立つことはしなかったのだと思う。だから生活の糧を手に入れることができなかったのだ。もちろん、生活の糧を手に入れられるかどうかには運も関わるが。

勉強や練習は努力で、人生を好転させるために欠かせない。しかし、それを使って他人と関わる、つまり行動をしないと駄目だと思う。…小説を読んでいて、小説とは関係ないそんな思索が頭を駆け巡った。