杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

捨てられた漱石全集

先日、住んでいる集合住宅の廃品回収の中に、漱石全集があった。岩波のものである。

私もかつて岩波の漱石全集を持っていたが、手放した。漱石全集は大部だし、なんといっても漱石なのだからたいていどの図書館にも全集が揃っているので、わざわざ自分で持つ必要はない、と判断したからだ。ちなみに私が持っていたのは今出ている四六判ではなく、もっと前に出ていた大型のものである。

さて先日見た、捨てられた漱石全集を持っていたのは、どんな人だったんだろう。そのサイズは私が持っていたのと同じ大型のものだったから、捨てた人が全集を入手したのはけっこう昔である可能性がある。ちなみに私が住んでいる集合住宅はすでに五十年近く経っている古いところで、今では高齢化が進み大きな課題になっている。

もしかしたら私が見た全集は、八十歳くらいの高齢者が手放したものか、あるいは亡くなった人の遺品だったのかも知れない。また、その人は文学に強い関心があったと思う。その人がいつごろ全集を入手したのかは分からないが、普通の人が一般教養の感覚で、つまり図鑑とか百科事典を揃える感覚で漱石全集を家に置くとは考えにくい。となると、やはり文学への関心が高い人だったんだろう。