杉本純のブログ

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せどり雑感

せどり」に興味があったので「新潮45」2015年6月号所収の坪内祐三高原書店からブックオフへ、または『せどり』の変容」を読んだ。

内容は坪内自身の古書店遍歴が中心になっており、「せどり」について本格的に述べたものにはなっていないように思う。本稿によると、坪内が古本少年になったのは1974年の高校入学以降のことであるらしいが、坪内と古本屋の関係はそれから変わったそうで、特に二十一世紀に入ってからの十数年は大きく変わったという。

私も、あくまで肌感覚に過ぎないが、古本屋との付き合い方、というか利用の仕方がここ数年でずいぶん変わったように感じている。神保町では私は「かんたんむ」が好きでよく利用していたが、けっこう前に閉店した。岩波ブックセンターもなくなり、神保町の表情もけっこう変わったと感じる。

Amazonに出品している古書店で買った古書は、今のところどれも状態に不満はなく、店舗に足を運ばないで買えることもあり、多忙な中、利用頻度はリアル古書店より高くなっている。そもそも地元にリアル古書店がなく、自然と足が遠のいているのだ。コロナの影響も皆無ではない。とはいえ、近所にBOOKOFF(これも一応は古書店というべきか)があり、ここには割と足を運んでいる方である。

さて、坪内は「せどり」には絶対にならない、と決めていたという。「せどり」には店舗所属の人とフリーの人がいるらしく、後者の方は「半ばヤクザに見えた」ので、絶対にならないと思っていたそうだ。

せどり」について、その歴史などは全然知らないのだが、ヤフオクとかメルカリとかAmazonとかを利用して「せどり」をしている人は、肌感覚ながらけっこういるんじゃないかと認識している。坪内は、今(2015年時点)の「せどり」はサブカル系で、ゲーム感覚で参加できる、と述べている。なるほどそういうものかも知れない。一方、ヤクザのような外見の「せどり」は、やはり職業柄、一種の「目利き」でないときちんと稼げないから、自然と鋭い目つきになったんじゃないかな、と漠然と思った。

安く仕入れて高く売るのは商売の基本だと思う。近年はネット上で色んなものが流通するようになり、玄人の仕事だった「せどり」も素人でも手が出しやすくなった、といった側面もあるだろうか。副業としてやる人もいるだろう。

坪内の文章、全体にふわふわした印象だが、なんとなく味がある。なお「敷居が高い」を誤用していると思われる箇所が数か所あった。

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