杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

古書は資産

島崎藤村の『春』だったか『家』だったかに、旅費を捻出するために古書を売る、なんていう場面があったと記憶している。『春』でも『家』でもない他の作品だったかも知れない。

私も、旅費ならぬ生活費が足りなくなり、古書を売り払ってしのいだ経験がある。

古書への情熱はとどまらず、これはもはや病気だろうと思うが、生活しているとどんどん増えてくる。ブックオフで買うこともあれば街に古くからある古書店、新参の古書店にも足を運んで買う。興味のある分野に関する面白い本があると、読む予定がなくても買ってしまう。それは、古書というのは基本的に出会ったその場で買わなかったら、もう死ぬまで会えないかも知れないからである。だから、古書を買う習慣がある人にとって「積ん読」は宿痾のようなものだろう。

さて、それでも読んでしまえば、いかに良い古書でも用がなくなる。その分野の研究をしていたり、ことさら愛読書でもない限りは、それ以上持ち続ける必要がないので、売ってしまって構わない。

藤村の小説のように、古書をまとまった量で売るとそれなりのお金になる。買った時より高く売れることは稀だが、それなりの額にはなる。その意味で、古書は一種の財産と言えるだろう。古書で学んだことを仕事にすることができれば、お金を生む資産だとも言えるかも知れない。