杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

フリーペーパーの世界

佐伯琴子『狂歌』(日本経済新聞出版社、2019年)を読んでいる。これは第十回日経小説大賞受賞作(2018年)で、著者の佐伯は第八回、第九回にも同賞の最終候補となった。

まだ全部読んでいないのだが、ストーリーは愛憎劇のよう。特に興味深いのは、作品の主人公が福岡でタウン誌会社の編集長をしていることだ。タウン誌はフリーペーパーで、私もかつて、川崎市でフリーペーパーのタウン誌の営業と編集をやっていた。

フリーペーパーは今はすっかり定着して落ち着いているが、かつては「R25」とかが大流行りで、クーポンをつけたものも多かった。一時代を築いた、とまでは言わないまでも、かなり勢いがあったことが印象に残っている。もっとも、本作の最初のほうは2013年なので、私が記憶している頃とは年代も地域も異なる。

ただ、タウン誌というのは当然ながら地域密着で、それはのめり込むと奥深い、面白い世界だと思っている。作品はいきなりニューカレドニアのカジノが出てきたりするが、タウン誌の世界をどんな風に扱うのか楽しみ。