杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

事実は小説より奇なり

ヒルズ 挑戦する都市』(朝日新書、2009年)著者の森稔は、もともと小説家志望で、不動産の世界に入った当初は小説のネタ集めくらいのつもりでいた。しかし、次第に開発の仕事にのめり込んでいくことになる。

赤坂のアークヒルズの開発の頃については、こう書かれている。

 アークヒルズの開発では、じつにいろいろなタイプの人に出逢い、その人生に深く関わることになった。まさに「事実は小説より奇なり」だった。
 当時は、もう再開発に首までどっぷりつかっていたから、小説を書こうという気持ちも時間もなかったが、小説のネタならば山ほどあった。
 なにしろ、登場人物が半端ではない。
 再開発現場を渡り歩くブラックジャーナリストのような人が、地区に入り込んでかき回してみたり、壮士気取りの右翼の親分が登場したり、刑務所に入っている人までいた。「刑務所まで出向いて交渉するしかないか」と覚悟をキメたら、出所してきて交渉に応じてくれたが……。

小説の外の世界に思い切って入っていってみると、そこには小説のネタがたくさんある。「事実は小説より奇なり」は、真実だと思う。昔、映画学校の先生が、映画の外の世界を知らなくては映画は作れないんだから、映画オタクは来なくていい、みたいなことを言っていた。

それにしても、不動産は動く金額が大きく、土地や権利のやり取りをする世界でもある。だから不思議な人がいっぱい集まってくるんだろうなと思う。面白い世界だ。