杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

レゾンデートル

森稔『ヒルズ 挑戦する都市』(朝日新書、2009年)冒頭は、ハーバードビジネススクールに森稔が招かれ教授や学生とセッションする様子を伝える記事である。これで面白いと感じたのは、学生の質問が学生とは思えないほど具体的かつ鋭いことだ。なんというか、良い意味で目上の人を恐れていない感じを受ける。日本の学生はこういう質問がしにくいんじゃないか?と漠然とだが思った。

中である学生が、「あなたが、若いころにもらいたかったアドバイスをわれわれにしてください」と問う。森稔はこう答える。

自分のレゾンデートル(存在意義)を早く探し出すこと。私自身もっと早くわかっていたならばなあ、と思うことがあります。

森稔はもともと小説家志望で、父の不動産会社に入った当初は小説のネタ集めをするくらいの考えだったようだ。しかし、それが都市づくりにのめり込み、半世紀以上を捧げることになる。小説家でなく不動産の仕事を自分のレゾンデートルだと思うようになったのかも知れない。言うなれば「天職」のようなものかな、と思った。

その人の天職とか適職というものが本当にあるのかどうか、分からない。あるような気もするが、そういうのは自分の野望や挑戦心を諦めるのに都合の良い考えのようにも思える。また、レゾンデートル=天職や適職、というわけでもないだろう。レゾンデートルの方が、もうちょっと深い概念である気がする。

とまれ、自分のレゾンデートルを確信した人間が強いのは間違いないと思う。恐らく大切なのは、レゾンデートルを見つけられるところまで徹底的に前進すること。