岩波書店「図書」867号(2021年3月)冒頭の「読む人・書く人・作る人」は、佐伯一麦が寄稿している。タイトルは「十一年目の枇杷」で、自宅の庭にある枇杷の若木が、十一年目にしてようやく蕾をつけたことを紹介している。
その枇杷は、2010年に木山捷平の子供・萬里から送られた長崎産の「茂木びわ」の種を植木鉢に埋めたもの。その後、芽を出し、数度の移植、震災もあったが、ゆっくりと育ち、やっと蕾をつけたのだ。
佐伯は前にも上記の枇杷のエピソードを紹介している。河北新報の毎週金曜夕刊に連載のエッセイ「月を見あげて」の、2011年3月4日「枇杷は九年で…」である。その記事は、2010年の梅雨の時期にもらった枇杷の種を植えたところ、二つの芽が出て、将来実をつけるのを楽しみする、という内容になっているが、このたびようやく、である。
佐伯一麦と木山捷平の接点といえば、第一回木山捷平文学賞を受賞した『遠き山に日は落ちて』と、笠岡市の木山捷平文学選奨・短編小説賞の選考委員をしていること。