杉本純のブログ

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「新潮」3月号「創る人52人の『2020コロナ禍』日記リレー」

「新潮」3月号は「永久保存大特集 創る人52人の『2020コロナ禍』日記リレー」が掲載され、執筆者の中には佐伯一麦もいる。

その他の執筆者のも含め、一年分ざっと読んだのだが、いったいこの特集はどうやって作ったのだろうと思った。

リレー形式の日記は、一人が一週間ずつ書き、52人で一年分になっている。最初の1月1日は筒井康隆なのだが、その一週間分の文章にコロナへの言及はない。コロナのニュースはそれ以前からあったような気がするが、それを踏まえ、編集側が日記の寄稿依頼をしたのなら筒井がそのことに言及してもよさそうだが、ない。

となると、2020年のコロナ禍を受けて編集サイドで企画を立て、原稿依頼があろうとなかろうと日記を書いている作家52人を選び、割り当てた週の分を寄稿してくれ、と依頼したと考えるのが自然か。現に各作家とも、その日食べたものや、どこで誰と会ったなどけっこう詳しく書いているので、普段から書いているとしか思えない。あるいは、手帳に記したものを再編して日記にした人もいるかも知れない。

さて佐伯一麦の日記だが、この人の分が3月11日から始まっているのは狙ったものだろう。東日本大震災に関することが書かれている。そしてところどころ、コロナ禍に関連する話題に言及している。

3月16日には「古井由吉氏の追悼原稿を執筆する。」とあるが、これは恐らく「新潮」5月号に寄せたものだろう。佐伯は他に朝日新聞4月11日(土)朝刊に古井の追悼文を寄せているので、こちらである可能性も否定できない。他、知人との電話の会話の内容も記されていて、その知人はイニシャルで表記されているのだが、もしかしたら佐伯の小説に出てくる人ではないか、などと思った。日記を読むのは面白い。