杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

書き続けること

鈴木輝一郎『何がなんでも作家になりたい!』(河出書房新社、2002年)は、今から二十年近く前の本だがためになって面白い。

鈴木先生は、現在はどうなのだか知らないが、岐阜在住で、左官コテのメーカーの経営をしているそうな。コテづくりの鍛治をしていたが営業に回るようになったそうで、どうしてコテ屋をやっているのかというと、「頭をさげる場所を確保しておきたいから」とのことである。

ワナビ向けの小説家の書き方(なり方)本で見たことがあるのは、勤め人をしながら作家を目指している人は、ワナビをこじらせて辛い思いをしているかも知れないが、その仕事を辞めるな、きっと書き物をする上で有意義な体験になるから…というものだが、先生は作家をやりながらなおかつ働いているのだからすごい。

私なんぞは、もし、小説を書いて金になるならとっとと勤め人から足を洗いたい、と考えることがたまにある。しかし書いた物がバンバン売れる売れっ子作家ならまだしも、そんなことはまずあり得ないことはもう知っている。やはり何らかの形で勤め続けなくてはならないだろうと思うが、それとは別の考え方、つまり先生が言うように「作家」とは違う態度でいる場所を確保するのも重要な気もする。

先生は本書の最後で、新人賞を確実に受賞する方法を「受賞するまで応募し続けること」と書いている。この言葉をどう受け止めるかは、かなり重要なことだと思う。