和田芳惠の伝記って書かれているのかな、と思って探してみたら、吉田時善『こおろぎの神話 和田芳惠私抄』(新潮社、1995年)というのがあった。ただこれは「私抄」とあり、和田の傍らにいた人が書いた私的な伝記になっている。また妻の和田静子による『命の残り 夫 和田芳惠』(河出書房新社、1989年)は回想である。
講談社文芸文庫『暗い流れ』(2000年)には伝記的事実を含んだ和田文学に関する詳細な解説があったと記憶している。私の手元には同じく文芸文庫『おまんが紅・接木の台・雪女』(1994年)があり、保昌正夫による作家案内がついている。また和田自身に「自伝抄」がある。
和田の研究者による、一冊にまとめられた全生涯の伝記というのはまだ書かれていないのかな。
和田は1906年(明治39年)生まれで、私の祖父の一歳下になる。歿年は1977年(昭和52年)で、私が生まれる二年前になる。七十一年の生涯。墓は茨城県古河市の宗願寺にあり、そこには一時期、佐伯一麦がたまに足を運んでいた。