杉本純のブログ

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事実と感情

ナニワ金融道』の作者・青木雄二の『ナニワ資本論』(朝日文庫、2001年)は、古書店でたまたま見つけて購入したと思う。

この本で最も印象に残っているのは最後の「「在る」と「思う」の関係」で、「存在(在る)」と「意識(思う)」をはっきり区別して物事を考えるのが大切だ、と青木は述べている。

例えば、机を動かしたいと心でいくら思ったところで絶対に動かせない。「在るものは思うことに関係なく成り立っている」と青木は言う。それはマルクス・エンゲルス弁証法唯物論哲学を指しているそうだが、読んだことがないので分からない。青木は、資本主義社会では搾取する階級は働く者にそれを知られては困るので義務教育で教えてこなかった、と言うのだが、ではその事実はどこに「在る」のだろうと疑問に感じる。

さてしかし青木の言うことはやはり真実だと思うことがある。仕事や人生の重要な場面で、「気持ち」だけで決断をしてしまう人を見た時などだ。もちろん気持ちは大事なのだが、Aの道とBの道のどちらが自分にとってプラスになるか、ちょっと冷静に考えれば分かるはずなのに、損だと思われる道を気持ちを優先して選んでしまう。そちらの道を選んだらどういうことになるのか、本当に分かっているのかと聞きたくなる。当人に言わせると、それ以外に方法がない、というような言い方をするが、冷静に事態を見ればそんなことは全然ないので、「感情」と「事実」を混同しているのではないかと感じる。

どれだけ思ったところで、事実は事実である。目の前にある事実を素直に受け入れれば良いのだけれど、それができない人が意外に多い。