杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

ボツ作品が書き手を前進させる

私はWEB小説をほとんど読んだことがないが、田島隆雄『読者の心をつかむ WEB小説ヒットの方程式』(幻冬舎、2016年)を読んで、WEB小説の作家の小説に向かう姿勢にけっこう頷かされる。こないだは『加賀100万石に仕えることになった』という作品を書いたシムCMという作家のインタビューを読んだが、この人のエピソードはワナビに大きな示唆になるのではないかと思った。

共感できない部分もあるが、例えばシムCMは、「小説家になろう」に投稿を始める前に書き溜めをしておいて、投稿後は毎日一話更新したそうだ。それが人気が出た理由だろうと本人は推測しており、たしかに読む側にとっては毎日更新されるのはうれしい。

また、かなりの労力がかかる書籍化を狙わず、書きたいものを書くことの方を優先しているようだ。多くのワナビは、とにかく早く新人賞受賞=デビュー=書籍化したいと思うかも知れない(私がそうだったからそう思う)が、ワナビを完全にこじらせてしまった今の私は、書きたいものを書く方が大切だと思う。さらにシムCMは「とりあえず書いてみること」が大切だと述べており、途中で詰まって書けなくても、それはそこまで書いた実績として残ると言う。『加賀100万石に仕えることになった』はそういう挫折した作品がなければ書けなかった、と。私は、書き出したら最後まで書くことが大切だと思うが、ボツ作品をたくさん書くことで前進できるというのは完結・未完に関わらずその通りだと思う。