杉本純のブログ

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立体的に把握する

先日、あるライターの取材に同行した。そのライターがメインで取材を行い、私はどちらかというと補助の立場で参加した。

そのライターに同行するのは初めてではなかった。以前に一度、一緒に取材をしていて、その時も同じような役割分担だった。また、そのライターが取材した音声を預かり、私が原稿を書くという仕事も数本やった。

驚いたのは、そのライターの取材が「穴だらけ」だったことだ。いつ、誰が、どこで、何を、どのように、なぜしたのかがあまりに抜け落ちていて、ただ話題が転がるままテキトーに受け答えをしていた。ただし、冗談も交えながら明るく会話していたので、取材の場は盛り上がったのである。それもある意味で驚きだった。

私は、取材原稿を書くには取材対象の話をできるだけ立体的に把握する必要があると思っている。記事は氷山の一角だが、それを書くには氷山全体を掴んでおくべき。でないと、記事内容について人から質問を受けた場合に答えられないという事態になってしまうからだ。

「立体的に把握する」というのは、定義が難しい。5W1Hを掴むのでもいいだろうし、「なに」と「なぜ」の二本柱でもいいだろう。つまり、時間的な流れと空間的な位置づけをはっきりさせるということ。それができて、初めて「話」として頭に入ると思っている。逆にそれができないままだと、ただ情報が断片的にあるだけの状態になり、話にはなっておらず、自分の言葉で書くこともできない。

先日の取材では、私は自分が分からない箇所は全て追加で聞いたので問題はなかった。そのライターには、こんなんでよくライターが務まるなあと思ったものだが、取引先からはけっこう人気があるらしいのでさらに驚いた。明るい、というよりお調子者あるいは口八丁といったタイプで、場を盛り上げてくれるので重宝されているのかも知れない。ただ、そういう人は他にいくらでもいるだろうから、割と簡単に捨てられてしまうのではないかとも思う。やはり勉強が重要である。