杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

自分の企画を動かす。

私は勤め人としてライターをしていて、その経歴はすでに軽く十年を超えている。企画立案から取材、原稿執筆、その後の校正作業に至るまで一通り覚えたという自負はある。印刷用語やデザイン用語の中には知らない言葉も多いが、ライターと呼ばれる人が主に携わる業務範囲のことはたいてい分かるつもりだ。

近年では編集部に対しライターが企画提案をすることがほぼ常識になってきているように感じる。企画というより、企画構成案の類いか。編集部の方で出すのは取っ掛かりのアイデアのようなもので、それをライターが決められたページ数の構成案にまで練り上げるのだ。

他人が「やりたい」と言ったアイデアを、企画というもっと具体的な形に仕上げていく作業も、この十年以上でさんざんやった。切り口や表現方法など、それなりに色んな案を出させてもらい、私の過去の企画書を並べればけっこうバリエーション豊かな企画集ができるのじゃないかと思うほどだ。

ライターは基本的に、他人から頼まれて取材をして、原稿を書くのが仕事だ。企画構成も、他人に頼まれたアイデアを形にするのが仕事になるだろう。一方で、「オレはこれをやりたい(書きたい)」という思いから企画を立て、実際に取材して書いたのなら、それはもう「ライター」でなく「物書き」と呼んで良いと思う。

私が物書きを目指し始めたのはライターを始めるよりも前のことだった。けれども、自分の企画と他人の企画、どちらを多く形にしてきたかというと、もう圧倒的に他人の企画の方が多い。これではいかん。これでは恥ずかしいと思う。物書きをやっていく以上、もっと自分の企画を動かさなくては。