ビル・ローバックの『人生の物語を書きたいあなたへ』(仲村明子訳、草思社、2004年)の「はじめに」には、大学の創作科で教えていたローバックの講座にやってきた元新聞記者のエピソードが載っている。
その元記者は四十五年間の勤労の後、退職し、メモワールやエッセイを書こうとしたが、書けなかったという。そして、場所を変えれば書けるのではないかと考え、「多くの作家が利用することで有名なナンタケット島の、オフシーズンで格安の十日間の宿」に出掛けた、とある。
おお、出た出たナンタケット島!と私は思った。
ナンタケット島=アメリカ文学ゆかりの地、と私は一人勝手に思っている。ポオの『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』があるし、メルヴィル『白鯨』にも出てくる。アメリカに行ったらナンタケット島に行きたいと思っている。
ローバックは色んな職業を経て作家になった人で、O・ヘンリー賞やフラナリー・オコナー賞を取っているが、私はぜんぜん知らないし、元新聞記者のことももちろん知らない。
とまれ、ナンタケット島に多くの作家が利用する宿があるとなれば、「ゆかりの地」という私の説は強化されるではないかと思った。