杉本純のブログ

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「人間喜劇」の登場人物

典型的人物たち

エンツォ・オルランディ編、山本有幸訳『カラー版 世界の文豪叢書 バルザック』(評論社、1976年)は、いわばバルザックと小説作品のガイドブックのような一冊です。図書館で見つけ、借りてきました。

読んだのは「『人間喜劇』の登場人物」で、これは要するに「人間喜劇」の登場人物評です。恐らくオルランディが書いたものと思いますが、「人間喜劇」に現れるキャラクターたちを、テーマごとの典型的人物として横断的に紹介していて面白いです。テーマは「金銭に憑かれた人たち」「野心の責苦」「貧しい一族」「家庭の天使」「『人間喜劇』の“神聖”な女性たち」「野心に燃える冷酷な美女たち」「ジャック・コランの創造」「「絶対」の探求者たち」「バルザックが画いたパリ」の九つ。

ところどころ共感を覚える面白い評でした。『あら皮』のラファエルは、ここでは「「絶対」の探求者たち」に入っています。ゴプセックとグランデ老人はもちろん「金銭に憑かれた人たち」に入るわけですが、ここではゴプセックの方がグランデよりも格上に扱われているように思えます。たしかにそうかも知れませんが、グランデが出てくる『ウジェニー・グランデ』は長篇であることから、私にはグランデの方が存在感が大きいと思えます。ただし「ゴプセック」も、短篇ということもあって高利貸ゴプセックの特異さが色濃く表れているとも言えます。

従兄ポンスは「貧しい一族」に出てきますが、従妹ベットは出てきません。トルーベール師もフィリップもシャベール大佐も出てきません。