理解できない思いと行動
宇佐見りん『かか』(河出書房新社、2019年)を読みました。
良かったです。「かか(母)」への深い愛憎を胸に、19歳の浪人生うーちゃんは、ほとんど崩壊している家族を離れ、孤独で苦しい熊野行きを敢行する。うーちゃんの思いと行動は意味があるのかないのか分からず、一般の大人にはまず理解不能なものでしょう。しかし人間のそういう姿を描くのが、純文学ではないか。私はそう思います。
本の帯には本作への著名人のメッセージが複数掲載されていますが、中で高橋源一郎がこう書いています。
『かか』を読んだとき、私は宇佐見さんが好きだという中上健次の『一九歳の地図』を思い浮かべた。どちらもこの世界には絶対に屈しないという十九歳の叫びだ。
後半はその通りかもしれないと思いましたが、私は『一九歳の地図』(正しくは「十九歳の地図」か)は思い浮かびませんでした。「十九歳の地図」は犯罪への憧憬めいたものを描いていて、自分の力ではどうにもできないことに悩み苦しむ『かか』とはまるで違うと思いました。
『かか』は読みたいと思いながら長く読めなかった作品で、今回ようやく読めました。次は『推し、燃ゆ』『くるまの娘』と読み、追いつきたいところ。また宇佐見りんについては、創作の周辺のことも調べてみたいと思っています。