杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

「かか弁」

何らかの発達障害

宇佐見りん『かか』(河出書房新社、2019年)を読んでいます。

本作は第56回文藝賞受賞作で、遠野遥「改良」との同時受賞でした。また本作は第33回三島由紀夫賞を受賞しており、当時21歳の宇佐見は同賞の最年少受賞者になりました。
ずっと読みたいと思い、読み始めるまでに数年が経ってしまいました…が、ようやくページを開きました。

宇佐見は静岡県出身で神奈川県育ちですが、本作はどこの方言なのかよく分からない一人称の語りになっています。筆力は高く、引き込まれるものがあります。

まだ読んでいる途中ですが、「かか」は「似非関西弁だか九州弁のような、なまった幼児言葉のような言葉遣いをします」とあり、それは語り手から「かか弁」と呼ばれています。

「かか」は「ありがとう」を「ありがとさんすん」、「おやすみなさい」を「まいみーすもーす」と言ったりします。私自身、単語と単語が脈絡なくくっついた、あるいは溶け合って別の音に変化した、他人には分からない「自分語」とでもいうべき言葉を幼少期に使っていたので、本書を読んでいてドキッとしました。

こういう、「自分語」を作り上げてしまう人間の心理とは一体…。私は、その自分語はいくつかを今も覚えているくらい、自覚的に使っていましたが、十代の間に使わなくなったように思う。しかし「かか」は大人になっても使っているようなので、何らかの発達障害なのかもしれない、と思いました。

宇佐見りんについては、今後も詳細かつ継続的に読んでいきたいと考えています。