杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

オンとオフ、ハイとロー

ローでもいいので進む

三田紀房『汗をかかずにトップを奪え!』(大和書房、2007年)に、ビジネスマンはよくオンとオフ、つまり仕事と休暇を切り分けて考えるが、そうではなく常に仕事モード、すなわちオンの状態にしておくべきだ、と述べる箇所があります。

以前の私の上司は「俺は24時間、365日仕事だ」と言っていました。しかし、その言い方がどこか自己陶酔的で、自分は完全な仕事人間なんだと思いたがっている雰囲気があったので、どうも私はその考え方がいただけませんでした。そうしたこともあって、オンとオフを切り分けず常にオンであろうとする人を、底の浅い仕事中毒者と考えていました。

ただ私自身、実を言うと学生時代などはすべてを映画に捧げていたつもりですし、社会へ出たら仕事一色の純粋な生活を送りたいと思っていたものでした。だから、本来なら上司の考え方は受け入れられるはずでした。実際、私は一時期は上司についていこうと必死に頑張りました。しかし上司の私への要求は限度がなく、モラハラ的ですらあり、上司の下で働いていた期間に私はかなり憔悴しました。やがて私は、オンとオフを区別しようとしない人を、自己陶酔的だと批判的に見るようになっていきました。

そうした次第で、オンとオフに関するいくらかこじらせた思いを抱いていたので、本書の上記の箇所には最初かなり懐疑的でした。カッコイイことを言っているが、所詮は仕事仕事と気取っているだけの自己陶酔的な野蛮な考え方だろうと。

けれども本書にはそういう雰囲気はありませんでした。いや、そうだと断言はしませんが、少なくとも私は自己陶酔的な雰囲気を感じませんでした。

また、いつでも仕事モードをオンにはしておくけれども、休みの日にまで出社している時のような緊張状態を続ける必要はなく、とはいえオフにはしない、といったことが書かれていて、なるほどと思いました。緊張状態は、言うなればハイの状態で、それを休日でも続けていると消耗してしまう、だからといってオフにして仕事を完全に忘れてしまうのではなく、ある程度リラックスしているけれどもオンの状態、つまりローに設定しておこう、ということです。

オンかオフかではなく、ハイかローか。こじれていた私の思考は、いくらか解けた気がします。