杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

エタる

肝が据わっていないから

そんな言葉を最近知りました。

創作中の作品が完結せず終わり、永遠に未完のままになる、といった意味のようです。「永遠の」を意味する“eternal(エターナル)”からできた造語です。小説投稿サイトなど、創作者の集まる界隈で使われることが多い言葉だそうです。

夏目漱石の『明暗』はエタった小説です。バルザックの『農民』ももちろんエタっています。また最近だと西村賢太の『雨滴は続く』がエタっていますね。

もっとも、エタるは商業作品に対してでなく個人創作に対し使われる言葉であるらしいです。だから厳密にはバルザック漱石、西村の作品は当てはまりません。

私はかつて文学同人に所属して同人誌をつくっていました。そこに掲載された連載ものの小説、エッセイにはエタった作品が実に多かった。その原因はもちろん作者の死ではありません。同人というのは、往々にして作品をエタらせてしまうものかもしれません。幸い私は連載ものをやらなかったので、エタらせることはありませんでした。

自作をエタらせた同人は、たいてい、同人誌を脱退したことで結果として作品をエタらせてしまったのでした。しかしおかしいのは、自分の内部にきちんと作品ができていれば、所属する同人誌が変わっても書き続け、発表し続けられるはずなのに、それができなかったことです。書き手としての肝が据わっていなかったのでしょう。

実業家の場合は、始めたけれども儲かりそうにないビジネスは早々に撤退して次に行く、ということがあります。