杉本純のブログ

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自分を許す勇気

許すにはそれなりの努力が必要

吉田尚記『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』(太田出版、2015年)は、対人コミュニケーションをゲームと捉え、気まずい空気を打倒するためのさまざまな考え方、技術を紹介する本です。

その最後は「まとめ コミュニケーションは徹頭徹尾、人のために」という章で、その中に「ガンバレ、私のなかの勇気」という見出しがあります。そこにはこのように書いてあります。

 なぜ、この人と話をすると楽になるのか。みんながそういう「この人」になってほしい。真剣にそう思っています。それをぼくなりにあらためて考えると、自分を許した人こそが「この人」になれる。そう思うんですね。

著者の吉田さん自身、本書で紹介してきたコミュニケーションの手順は、「自分を許すための手順だったような気が、いま、するんですね」と書いています。

吉田さんは元々コミュ障だったそうです。今も基本的にはそうであるらしいですが、本書に書いてある考え方とやり方を実践し、多くの人とある程度うまくコミュニケーションをとることができるようになった、とのこと。本書の記述から想像するに、コミュ障である自分を責め、矯正しようとせず、逆に許して受け入れることで、乗り越えることができたのではないかと思います。

例えばワナビは、「何者か」になれない自分を許せず、努力を重ねて「何者か」への変革を成し遂げようとします。しかしワナビはたいてい、賞を取ったり、人気者になったりすることを目指しているから、努力ではどうしようもないケースがしばしばある。だから実力や努力と現実のギャップに苦しみ、果てはこじらせることになっていくわけです。

そういうワナビにとっては、吉田さんのように自分を許してやることが大切かも知れません。許せるようになるには、それなりの努力をしなくてはならないでしょうけれども。