杉本純のブログ

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キャラクター雑感

人間関係がすべて

吉田尚記『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』(太田出版、2015年)は、コミュニケーションに関するさまざまな技術を紹介する本です。その中に、コミュニケーションをとる上で重要とされるキャラクターについて述べているところがあります。

 キャラは周囲の予測から。自分がこうありたいって話ではない。先ほどから「周囲」って言葉をしつこく使っていますが、自分ひとりでいるときにキャラなんかありますか? ないでしょう。基本、誰かといるときにしか成立しないのがキャラクターなんです。周囲が予測してくれない限りキャラはありえません。

「周囲からの予測」は、他人と接している時の振る舞い方によって相手は自分のキャラクターの予測をする、ということです。ちょっと理解するのが難しい気がしますが、私が大いに頷いたのは、キャラは誰かといるときにしか成立しない、と述べているところです。

私は小説の創作をする過程で、登場人物のキャラクター設定がどうも苦手だし、嫌いでした。というのは、漫画のキャラクターがそうであるように、その人物の人格を部分的に強調し、オーバーといえるほどに表現する、安っぽくて低レベルなエンタメ手法のように考えていたのです。

しかし考え方は変わり、人物のキャラクターというのは人間関係を前提とし、人と接する時にどういう態度をとるか、といったことの設定であると考えるようになりました。その態度の後ろには、生い立ちに由来する価値観があり、また意志に裏付けられた行動があると、今では考えています。人間にとって他の人間との関係は生きる上でほとんど最重要のものであり、それを描くことは小説そのものでもある。となると、キャラはまさに小説の要諦ではないかと。

本書には、キャラクターは「行為の繰り返し」によって出来上がる、と書いてあります。なるほど。