「標準クラス」の作品
『個性を捨てろ!型にはまれ!』(大和書房、2006年)は、漫画家の三田紀房先生による一種の自己啓発書です。その中に、「食える」漫画家と「食えない」漫画家の違いについて書かれている箇所があります。両者は今では完全に二分されている、として、
そして漫画家にとって、勝ち組と負け組を分けるボーダーラインは、ただひとつ。
それは「漫画誌に掲載されるか、されないか」である。
どれだけ絵がうまくても、どれだけ高尚なテーマの作品であっても、掲載されなければプロとして意味をなさない。ご飯が食べていけない。
逆に言えば、「このレベルが描ければ雑誌に載る」という標準クラスの作品が描ければ、掲載され、原稿料がもらえ、生活ができる。とりあえず、プロとしての第一関門は突破できるわけである。
その上で、自分は漫画家として画力は低いが、ストーリーやキャラクターで勝負すればいいと思っている、と述べます。また、アイデアは独創ではなく既存のものの組み合わせによっていくらでも作れる、と。
画力、キャラクター、ストーリー…。勝負の要素はさまざまでしょうけれど、恐らくワナビにとっての問題の一つは、何らかの要素を「これで勝負する」というところまで磨き上げられるか、ということです。「標準クラス」といえど、どこかに新しさや光るものがあることが条件なのでしょう。多くのワナビはそれを、悩み苦しんで「独創」しようと頑張るのですが、そんなことしなくていいよ、ということなのだと思います。