杉本純のブログ

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佐伯一麦と西村賢太3

『還れぬ家』を評価

同じテーマで書いた前回の記事から、西村賢太の『一私小説書きの日乗』シリーズが気になり、読んでいます。

前回は西村が佐伯に言及している箇所を引用しましたが、探すと他にも見つかりました。『一私小説書きの日乗 憤怒の章』(角川書店、2013年)です。

「夜、佐伯一麦氏の新刊『還れぬ家』(新潮社)を読み始める。」(2013年3月29日)
「『還れぬ家』を読み継ぐ。」(3月30日)
「『還れぬ家』読了。労作。」(4月1日)

上記は各日の『還れぬ家』に関する記述のみを引いたものですが、西村は『還れぬ家』を2013年3月29日に読み始め、4月1日に読み終わったのです。3月31日には記述がなく、買淫したり短篇小説のネタ探りをしたりしたようで、『還れぬ家』は読んでいなかったのかもしれません。

『還れぬ家』の初版は2013年2月刊行で、西村は「新刊」と書いているし、発行後すぐに手に取ったのです。「労作」と書いているので、『還れぬ家』を肯定的に評価しているのは間違いありません。

私は前回の記事で西村は佐伯を敬愛していたと書きましたが、『還れぬ家』への評価からもそれは窺えますね。