こないだ2008年の『文藝年鑑』を見ていて、佐伯一麦と西村賢太が一緒に写っている写真を見つけた。巻頭グラビアの「2007年写真回顧」の、野間文芸賞と野間新人賞、野間児童文芸賞の授賞式の写真である。
2007年の野間三賞は、野間文芸賞(第60回)が佐伯一麦(『ノルゲNorge』)、新人賞(第29回)が西村賢太(『暗渠の宿』)と鹿島田真希(『ピカルディーの三度』)、児童文芸賞(第45回)が椰月美智子(『しずかな日々』)である。この四人が正装で花束を持ち、一緒に写真に写っている。
その授賞式やパーティーで、佐伯は間違いなく西村と言葉を交わしたと思うが、私小説作家同士がどんな会話をしたのか、気になる。
が、もしかしたら、会話などしていないかも知れない。当然のことだが、私小説の書き手同士だからといって必ずしも気が合うわけではない。
佐伯の『からっぽを充たす』(日本経済新聞出版社、2009年)は、佐伯が河北新報朝刊に2004年4月6日から2008年1月22日まで連載した随筆をまとめたもので、2006年に野間文芸賞を受賞した黒井千次(『一日 夢の柵』)には触れているが、自身が受賞した2007年のことは書かれていない。
私は佐伯の随筆は全て読んでいないし、西村の随筆となるともっと読んでいないが、今のところ、二人が相手のことを書いた文章には接していない。