杉本純のブログ

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曽野綾子と不眠症

曽野綾子『心に迫るパウロの言葉』(新潮文庫、1989年)を古書店で買った。ぱらぱらページをめくり、拾い読みしている。

本書のことは、本多信一の『内向型人間の仕事にはコツがある』(大和出版、1997年)という、内向型の人間が仕事をして生きるためのヒントを多数紹介している本を通して知った。曽野が自分が三十代の時期に不眠症だったことを自著で述べていて、本多さんは、そのくだりを引用しつつ、曽野は内向性を多分に持つ人なのだろう、と書いている。

今回実際に『心に迫るパウロの言葉』を読み、引用箇所を確認した。本多さんが引用したのは本書の「分裂した心」という章の冒頭だが、そのずっと前の章(「老年への贈り物」)でも曽野は自分の不眠症経験について書いている。

 私の身の回りに、なぜか今、鬱病不眠症の人が多い。共通していることは、その誰もが皆有能で責任感の強い人たちだ、ということだ。仕事をほったらかし、女房を騙して、競輪競馬に行けるような人は、ほとんど不眠症にならない。
 私は三十代に八年間も不眠症と付き合ったので、その人たちの苦しみがよく分かる。不眠症を脱するきっかけは、性格にもよるだろうが、私の場合「自分がこの世にいて仕事をしてもしなくても、どうってことはない」と強く思えるようになったことだった。

特に二段落目は、不眠症睡眠障害に悩む人が楽になるヒントになっていると思う。不眠や睡眠障害は本当に辛いが、その主たる原因の一つが、強い責任感から生まれてくる数多の心配事だろう。

真面目な人ほどそういう事態になってしまいそうだが、物事はとにかく抱え込み過ぎない方が良い。