バットを振り続けること
村中李衣『「こどもの本」の創作講座』(金子書房、2022年)を読んでいます。
手に取ったきっかけは、「おはなしの家を建てよう」というサブタイトルでした。本書の内容はタイトルにある通り、「こどもの本」の創作方法を教えるものですが、創作することを「家を建てる」という喩えで表現していることに興味を持ち、手に取りました。
著者は自分の子供が思い通りにならず、いらいらしていた時、友人からレバノンの詩人カリール・ジブランの『預言者』という本をもらい、そこに「子供の魂は明日の家に住んでいて、(後略)」と書いてあったらしい。また、「子どもに読んでもらうおはなしを書くということは、家を建てることと似ています」と述べています。
以上はともに序章に書かれていて、これがサブタイトルの由来だろうと思いますが、この比喩はそこまでのもののようでした。例えば家の土台は「こどもの本」の何に該当し、柱や梁やその他の素材が何に該当する、といった詳細さはありません。とはいえ、創作の手順を丁寧に手ほどきしています。
また終章には、村田喜代子が大学の文芸創作ゼミの学生に「いつもホームランを打とうとなんて考えなくていいんです」と話したエピソードが紹介され、バットを振り続けること=書き続けることが大切だと述べていて、その通りだと思いました。