杉本純のブログ

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爆発的ヒットがなくても。

漫画家・伊藤理佐

朝日新聞2月28日の「10代の君へ」は、漫画家の伊藤理佐の「好きって最強 人生が楽しく」でした。

伊藤理佐は1969年生まれで、小さな頃から漫画家志望だったが、周囲は本気にしてくれず、また漫画の地位は低かったためプロを目指していると言いにくい空気でもあった。しかし高校の先生が「いいんじゃない」と言ってくれたお陰で安心する。17歳の時に投稿作が月刊誌に載ってデビュー。親からは進学という条件を出されたため、短大に進学してアシスタントをしつつ、風呂なし四畳半のアパートで描き続けた。好きなことなので苦境は気にならなかった。

好きでい続けられる才能

記事のメッセージは「好きって最強」で、それによって人生が楽しくなるということでしょう。しかし私は末尾の「『爆発的ヒット』がなくても」という言葉を見て、あれこれ考えました。

漫画家のみならず音楽家や画家、作家なども、世間のイメージは両極端である気がします。すなわち、爆発的ヒットを出して大金持ちになるか、さもなくばまったく売れなくて惨めな貧乏生活を送るか。

さて、「爆発的ヒット」がなくても、と言う伊藤さん。実際はそれなりに売れているでしょう。ベストセラーやミリオンセラーというほどではないのかも知れませんが、生活するのに困るほどでないのは間違いなさそう。つまり「爆発的」ではなくとも、それなりにヒットしているんじゃないでしょうか。

いずれにせよ、好きなことが仕事になるなら「爆発的ヒット」でなくてもいいでしょう。けれど、ワナビの中にはデビューすらできず、社会へ出てからも現実が思い通りにいかず悶々としている人がいるし、たとえデビューしてもそれ以降は鳴かず飛ばずで辞める人もいます。

伊藤さんに言わせれば、本当に好きならワナビ生活もデビュー後の鳴かず飛ばずも苦にならない、ということかも知れません。好きでい続けられるのは、それだけで一つの立派な才能なのだと思います。