『ママ友がこわい』ストーリー
野原広子の漫画『ママ友がこわい』(KADOKAWA、2015年)を読みました。私は前に同じ著者による『消えたママ友』(KADOKAWA、2020年)を読み、自分が男だからか、やや共感が難しいところがあって困った経験があったのですが、本作もまた、難しかったです…。
主人公は子供が保育園に行っていて、その子が同じ年の子と友だちなので、自然に友だちのママとの関係が生まれた。いわゆる「ママ友」の関係になったのだが、ある些細なことがきっかけで嫌われてしまう。それどころか、嫌がらせめいた仕打ちをされる。その「些細なこと」は、主人公とママ友とでは認識が食い違っており、とはいえ些細であることには違いない。後半、そのママ友もママグループ的なところから仲間外れにされてしまい、それで立場が弱くなったこともあり、また主人公と会話をしたりする。最後は、主人公が次の子を妊娠して、同じく次の子を妊娠中のママ友と病院で会い、ママ友が、また同じ学年だね!などと言う、その笑顔に主人公が恐怖を覚える。…だいぶ端折りましたが、だいたいそんなストーリーです。
人間関係で消耗するのは損
ネットでは、本作のホラー感がすごいとかリアルだとかいう感想が多かったですが、私はこういう出来事を特に怖いと思わず、リアリティもさほど感じませんでした。
主人公とママ友が仲違いするきっかけとなった「些細なこと」は、どう見てもちょっとした失言に過ぎず、悪意を含むものではありません。これくらいのことは日常茶飯事なので気にする必要はないし、気にするべきでもないでしょう。
いや、世の中には気にしてしまう人もいるんだ、という人がいるかも知れませんが、気にするならするで、気にしなくても済むように行動するのが良いでしょうと。
相手との関係を継続したいなら、膝を突き合わせて話し合い、謝罪が必要だと思ったら謝ればいいし、相手に非があると思ったら抗議すればいい。それをやる気がないなら離れてしまえば良くて、相手が嫌がらせをしてきたなら毅然と抗議すればいい。
相手への敬意を持ちつつ、自尊の精神も持つ。主人公が抱える恐怖や悩みは、人間関係を維持するためのシンプルな理屈一つで解決できると思える。ママ友一人にこんなに悩む必要あるか?と思うと同時に、こんな人いるんだろうか?とも思いました。
失言は誰にだってあります。私自身、別のパパに対し「しくじった」ことは何回もある。悪意はなかったけど、どうやら傷つけてしまったようだ、という経験です。やってしまったことは取り消せないので、悪かったと思えば謝るし、謝るまでいかなくても反省して以後同じことをしないようにする。それで相手が離れていくなら、仕方ない。逆に相手から傷つけられ、興味が失せたこともあります。それで離れていくこともありましたが、うまく距離を保って付き合い続けることも。
良い縁があればそうでない縁もある。良いと思った相手が良くなかったり、嫌な奴だと思っていた人が実はいい奴だったり。人間関係は有為転変するもので、思わしくない方向に行ったからといっていちいち消耗していては損でしょう。
主人公は恐らくHSP
私のそういう思いは、私が男だから抱くものかというと、本作へのネットでの評価には私と同様の感想を述べた女性らしい人もいたので、性別は恐らく関係ないです。
とはいえ、主人公に共感できそうなところが一つあります。恐らく主人公はHSPではないか。多くの人が気にしないであろうことが「気になってしまう人」です。それが苦しさや生きづらさに発展してしまうことは、理解できます。
本作はHSPのそういう弱点がママ関係で災いした話を描いた漫画、と言えるかも知れません。ただ、HSPであること自体は劇的ではなく、困難な状況に対し主人公がどういう行動を起こすかがストーリーの要諦となると思います。