杉本純のブログ

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コミットとプロミス

コミットは強い

知人を見ていてときどき感心するのは、ああ、仕事にコミットしている人ってすごいな、ということです。

コミットはコミットメント(commitment)を略した語で、「結果を約束する」という意味ですが、他にも「献身」「深い関与」といった意味があるそうです。語源は知りません。

つまり、仕事でいえば、お客さんや取引相手と同じ志を持ち、一緒になって働くことを約束する、相手と一体化する、といったニュアンスを持つ語になると言えそうです。「コミット」というとライザップのCMキャッチコピーが思い浮かびますが、要するにトレーナーがトレーニーの体づくりの挑戦に深く関与する、といったメッセージなのでしょう。

どこかきれいごとに聞こえなくもない語ですが、まさに仕事にコミットしている人を目の当たりにすると、上に述べたように感心する場面は多くあります。

仕事を愛し、取引相手と一体化している人を見ていて感じるのは、相手の喜びを自分の喜びとしていることです。そして、相手のためにどんどんアイデアを出すことができる、ということです。これは仕事を成功させる上でとてつもなく重要な要素であると思います。仕事や取引相手にコミットできる人は、ビジネスの世界でかなり強い存在であると言えます。

オーバーコミット、やがてプロミス

さて、一方で、コミットができない、いや、コミットしたくてもうまくできない人が世の中にはいるのではないか。私はときどき、そんな風に感じます。

相手のことを我が事と思うあまり、相手の問題を解決するために自分の心身を削るまでになってしまう、あるいは、過剰に介入して相手にあれこれ命令するようになる、といった行為にまで及んでしまう。そういう人がいるような気がするのです。先にコミットの意味を「献身」と書きましたが、心身を削るレベルになるともはや「献身」でなく「犠牲」になるのではないかと思います。

コミットに関連した語に「オーバーコミット」という語があり、越権行為を意味するそうです。上に書いたような下手なコミット、過剰なコミットがまさにそれでしょう。自分の心身消耗は一般的には、相手への越権行為ではありませんが、やらなくてもいい、あるいはやるべきではない行為に及んでしまっている点で、オーバーコミットと言えるのではないかと思います。

私の経験では、オーバーコミットを複数回経験した人は、相手へのコミットを忌避するようになる。初手にコミットしようとせず、できるだけ関わらないようにしようとするのではないか。

では、そういう人は仕事における取引先とのやり取りでどういう態度を取るようになるか。決して深く関わろうとせず、境界線を引き、ドライに処理をするようになる。つまり、同じ約束でもコミットではなくプロミスになるような気がします。プロミスは形式的に約束するという意味合いがあるそうですが、まさにそんな感じです。

コミットとプロミス。良し悪しは決められませんが、相手とのコミュニケーションをベースにする仕事で有利なのは恐らくコミットできる人でしょう。