杉本純のブログ

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「お金は後からついてくる」考

真実には違いないが…

仕事でたまに耳にする言葉です。

セールスやサービスの現場で、お客さんに愛情を持ち、お客さんのためになることをやり続ければ、後から自然と売上がついてくる、といった意味で使われます。頑張れば必ず報われる、みたいな言われ方もします。

私は、いかにもきれいごとに聞こえるこの言葉がどうも好きになれませんでした。世の中には無駄な努力が存在すると思うし、尽くしたり奉仕したりした人すべてが報われたかというとそんなはずはないからです。

一方で、では「お金は後からついてくる」はまったくの嘘っぱちなのかというと、どうもそうとも言い切れない。お客さんのためを思っていろいろなことを頑張り、それが喜ばれて新しい仕事につながった例は少なくありません。また、一定の成果を出した人におおむね共通して言えるのは、お客さん、あるいは仕事そのものに愛情を持ち、心血を注いでいることです。好きなことを続けていたら成果が出た、というやつです。

だから「お金は後からついてくる」は真実なのですが、かといって、よしそれならお客さんのために何でもやるぞ!と思ってやったとしても、お金になるとは限らない。恐らくそれは、実は「お金のため」にお客さんに尽くしているのであって、本当にお客さんのために尽くしているのではないのでしょう。または、とにかくお客さんに親切にしまくったあげく、ありがとうを言われておしまいになる例もあると思います。単なるお人好しですね。

単に「後からついてくる」だけ

きちんとお金がついてくるようにするためには、たぶん、行動する初手からお金のこともきちんと考慮しておく必要がある。ただし、お客からお金をがっぽりいただこう、と自己中心的に考えるのではなく、お客さんが得をして、なおかつ自分もきちんと得をするように考える。お客さんだけ喜んで自分が消耗するのではなく、お客からお金を抜き取って自分だけ得をするのでもない。両方にきちんと得るものがあるようにして、初めて頑張ったことがお金に変わるのではないか。つまり、単に後からついてくるだけで、やっぱり最初から考えられてはいるわけです。

そして恐らく、お客さんを好きになる必要はなく、愛を持たなくてはならないわけでもありません。愛情を注ぐのはむしろ自分、もっと言うと自分の仕事に対してではないかと思います。愛情は誇りと言い換えてもいいでしょうし、しばしば厳しさにも姿を変えることがあるでしょう。お客さんに愛情を持つことと厳しく接することは、しばしば通底すると思います。