参勤交代の様子が感じられる
1月22日より板橋区立郷土資料館で令和3年度特別展「江戸と金沢を結ぶ“板橋”―中山道板橋宿を訪れた大名たち―」が始まったので、さっそく見てきました。
江戸時代、江戸と金沢は信濃の追分宿を経由して北国街道と中山道で結ばれていました。その道を通って参勤交代をしたのが、加賀、越後、信濃などを領国とする大名たちです。「板橋宿」は江戸・日本橋に向かう際に通る最後の宿場で、いわば江戸の玄関口のような存在だったようです。特別展では加賀藩(金沢市)、高田藩(上越市)、松代藩(長野市)の大名たちと、それを迎えた板橋宿の姿が多数の資料を通して紹介されました。また、伝統工芸である友禅染も展示されていました。
加賀藩前田家の大名行列絵巻や、高田藩榊原家の参勤の際の日記、松代藩真田信弘所用の黒塗金古文字鞍など、多彩な資料が展示されていて面白く、勉強になりました。武家諸法度で制度化された参勤交代の様子が、板橋宿を軸にした展示を通して感じられた気がします。
文学好きにも楽しい展示資料
金沢から江戸までかかった日数は平均12泊13日だったそうで、今でいうなら約2週間かかったことになりますから、参勤が大名にとって一大行事だっただろうことが想像できます。道中、大名の命が狙われることだってあるかも知れず、大規模な行列編成になったのでしょう。時代が下るにしたがい、大規模な行列は藩の権威を示すものになっていったとのことです。
それにしても、展示資料は石川県立歴史博物館や真田宝物館といった県外の施設の所蔵品が目立ちました。これだけの資料を取り寄せるのは大変だったろうなと思われ、今回の特別展がかなり気合いの入ったものだと察せられました。毎度のことながら、これだけの展示が無料で見られるのは本当にありがたい。
また、喜斎立祥「東京戸田原さくら草」や『嘉永武鑑』が、別の意味で面白かった。戸田原は現在の戸田市の荒川周辺に広がっていた湿原とのことで、画題の桜草はその辺りに咲いていたのでしょうが、永井荷風の『葛飾土産』に浮間ヶ原の桜草に触れられている箇所があります。また『武鑑』というと森鷗外『渋江抽斎』ですね。鷗外が武鑑収集の途上で知った抽斎の生涯を綴る史伝の一つです。
特別展は3月21日まで。