杉本純のブログ

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「天から降ってくる」

忌野清志郎『ロックで独立する方法』が面白い。というか、色んな点で有益なアドバイス集という感じがして、とてもありがたく思う。

本書はロックミュージシャンが「独立すること」について、忌野清志郎が実体験から得た教訓を、端的ながら明確で強い口調で語ったもの。ワナビには響いてくるものがあるのではないかと思う。

「音楽が『天から降ってくる』瞬間」という節では、スランプ期にはどれだけ自分を絞っても掘り返しても音楽が生まれてこない、と語る。それでも作詞の依頼が来た場合、つまり頼まれ仕事がきた時は断れない、と言う。

 そんな時はどうするのかって?
 そりゃ無理矢理にでもでっち上げるしかないんだよ。締め切り前には徹夜してでもね。それがプロってもんだろ。

たとえ無理矢理やってでも、締め切りには必ず間に合わせる。それがプロだと私も思う。実際、本人は締め切りを大幅に遅れたことがあるそうだが。。

一番いいのは、スランプがきても大丈夫なように、調子のいい時に曲をつくりためてストックしておくことだな。打点や打率を稼いでおくみたいに。RCが急に売れ初めて、アルバム用に大量に新曲が必要になった時も、書きためたストックがたくさんあったからそれほど困らなかった。売れなかった時期に、レコーディングの予定もないまま、とにかく曲だけはいっぱいつくっといたから。「いずれ使える時がくる」と信じてはいたけど、あれほど見事に役に立つとは思わなかった。下積みとは、キミ、そういう時のためにあるんだよ。

私は「余裕が次の余裕を生む」と思っているが、それを代弁してもらったような気さえする。そう、調子のいい、余裕がある時に先を見越してどんどん生産しておくのが賢明だと思う。

それは藝術作品でもそうだし、お金でもそうだと思う。余裕が生まれたら貯めるなり投資に回すなりして未来の余裕に回すのがいい。お金の流れにもスランプのような状態、つまり停滞期というのはあるので、先を考え困らないように手を打っておくべきだと思う。

またここでは「曲ができちゃう時ってのは、ほんとに“天から降ってくる”としか言いようのない時があるんだ」と語られている。脳が冴えに冴えている状態を言っているのだと思う。逆に、いくら頑張っても曲を生めないスランプ期とは、重いストレスに長期にわたり曝されている状態ではないだろうか。